ホロライブの「りゅーーっときてきゅーーっ!!! / UMISEA」があまりにも音楽を超越した何かだったので感想とちょっとした分析

いやあの、あまりにも圧倒的すぎて卒倒した……

そんなわけで今回は楽曲感想・分析の記事です!
題材とさせていただくのはホロライブの湊あくあさん、宝鐘マリンさん、沙花叉クロヱさん、Gawr Guraさん、Ninomae Ina’nisさんによるユニット「UMISEA」による
「りゅーーっときてきゅーーっ!!!」。作詞作編曲はかめりあ氏。

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MVはショートバージョンですが、今回はフル尺ぜんぶについてお話できればと!
任意の音楽サブスクサービス等で聴けますので、ぜひぜひそちら聴きながらお読みください。

とりあえず頭20秒聴いただけでなにかがおかしいぞ、となると思うんですけど、
安心してください、291秒間ずっとこの調子です……

 

 

全体の雰囲気と構成

コンセプトとしては
「海」「沖縄(りゅーっきゅーっ→琉球ってことですよね)」
だと思うんですけど、
ガバキックが鳴ってたり、急にオーケストラになったり、急にホラーテイストになったり、聴けばわかるんですがいろいろとおかしいですね……
いわゆる「電波ソング」に分類すればいいのかな。

全体構成は
-0:16 イントロサビ(途中徐々に加速)
0:17-0:25  間奏サビ(役割的には間奏だけど歌入り)(ガバキックがやばいところ)
0:25-0:39 Aメロ(ヴァイキングオーケストラっぽくなる)(BPMが変わる)
0:40ー1:03 Bメロ(トロピカルポップみたいなの→電波っぽく)(またBPMが変わる)(しかも途中で加速する)
1:03-1:32 サビ(サンバハードコアみたいな感じ…)
1:32-1:56 Cメロ(サンバみたいな感じ)(またBPMが変わる)(しかもまた途中で加速する)
1:56-2:04 間奏サビ
2:04-2:19 Aメロ
2:19-2:45 Bメロ
2:45-3:16 サビ
3:16-3:47 ちょっとよくわかんないところ(ちょっとよくわかんないところ)
3:47-4:04 落ちサビ(テンポチェンジ、ラスサビ直前でまたしても加速)
4:04- ラスサビ

だいたいこんな感じですかね!ちょっとよくわかんないところ……もありますが、
それを差し引いてもテンポチェンジや加速が多すぎてもうわけわかんないですね……

とりあえず、部分部分で作曲視点の分析をしていきましょうか……!
「どれだけこの曲が好き勝手やってるか」
っていう観点と、
「それなのにまとまりを欠かずに構成されているすごさ」
っていう2軸で語っていければと!おもっています!


部分分析

-0:16 イントロサビ key=F BPM=140→180

入りのコードからまずD♭m6(9)という、およそkey=Fの曲とは思えない始まり方をしています。次のFM7を聴いて、「あ、Fの曲か」ってやっと気づく感じ。

入り2小節は順当にサンバっぽいサウンドなんですけど、
3小節目から4小節目にかけて「8分の9拍子」になり、ハードコアサウンドが加わり、そしてBPMが加速していきます。ちょっと何言ってるかわかんないですね(?)
この2小節は付点8分3発×2というところで、コードは「B♭→Gsus4→Am→B♭→Gsus4→Bm」みたいな感じ。6発目のBmが何気に超クセ者。

そして5小節目「C7(11)」で4分の2拍子、6小節目で4分の4拍子に戻るという感じでしょうか。

8-9小節目「ぎゅーっとしてちゅーっとしてりゅーーっときてきゅーーっ!!!」
の裏で三線が鳴っています。これがこの曲の貴重(?)な沖縄要素です。

この時点で初見のときのわたしは頭の中が「????」でしたけど、結果的にこれはまだまだ序の口だったという。

0:17-0:25  間奏サビ key=F BPM=180

なんでガバキックが鳴ってるんですか????????

と、ちゃんとコードの遷移にあわせてピッチが調整された「豪勢に放り込まれた至極丁寧なガバキック」が耳を引くこのパートですが、
左からシンセ、右からスティールドラム(多分)で刻まれるBPM180の16分裏のフレーズなども相まってガバキック以外も非常にカオスなパートです。全編通してヤバい曲ですが、音の詰め込みって意味では多分ここが一番ヤバい。ぱっぱっぱやっぱっじゃないのよ……

ついでにパートの最後ではAメロに向けて減速してるんですけど、それがまるで些細な事かのように思えてくるのがこのパート。ヤバい。

0:25-0:39 Aメロ key=Fm BPM=150

転調&テンポチェンジ&サウンドがオーケストラに。それはもう別の曲なのよ。

ただ実はここには前の間奏サビパートでけっこう丁寧に導入を行っていて、
間奏サビの最後2小節は「D♭→C」の進行になっているので、key=Fmへの転調が非常に自然なんですよね!こんなに破天荒な曲だけどところどころめちゃめちゃ丁寧。

それとこのパートの最後でまたさっきのガバキックが鳴ってたり。BPMが150なので、ガバっていうよりハードスタイルっぽい雰囲気になってますね。

0:40ー1:03 Bメロ key=A♭→F BPM=105→180

いやいやおかしい。なんかまた転調してるし、テンポチェンジしてるし、サウンドも全然違うトロピカルポップな感じになってる。さては別の曲だな??

3-4小節目「遭難『し(E)』ても すぐ『満(B)』々腹」のメロディに2ヶ所、本来スケール上にない半音遣いがみられて、しかもそのあと-3の転調をするのも相まって、けっこうテクニカルなメロディになってます。Aメロのメロディが素直な仕上がりなので、ここがテクニカルだとなおさら違いが浮き出ますね。

13小節目からBPMが上がって急に怪電波が混ざり始めます。14小節目から16小節目まで3拍子に。ここはGから半音ずつ上にスライドしていく進行……というか、コード進行というより「そういう音響演出」って感じですね。
いわゆる電波ソングだとこういう演出はしばしばみられますけど、
この曲の場合そこからの「あくまりさかまた おーおーしゃん」でまとめ上げてサビに向かうのが見事ですね!いやまとまってるかっていうと多分まとまってないんだけど、「あくまりさかまた おーおーしゃん」のフレーズ力が高すぎてなんか騙されるんだよな!!!このフレーズが「水戸黄門の印籠」の役割を果たしてるので、どんだけハチャメチャやっても「ははーっ」ってなる。すごいですよこれは。

1:03-1:32 サビ key=F BPM=180

BPM180でサンバキックをするな

サンバビートは16分の「1拍目」と「4拍目」にキックを配置するビートです。
通常BPM130とかでやるビートなので、このテンポでやると鬼のように忙しくなるんですけど、
キックやベースの音作りと16分の4拍目の音量調節(4拍目は1拍目より小さくするのが常道っぽい)が絶妙なので、忙しくも超かっけービートに仕上がってるんですよね、さすがかめりあさん。


そしてご本人による豪華解説もあるんですが、コード進行もメロディもなかなか凝ったことをしてるんですよね。
4-5小節目 「銀『河(D♭)』の」のあとにA♭M9→Am7と展開していくのがかなりテクニカル。
12小節目「『わ(F#)』れわれ」の半音遣いにEm7が乗ってるのもポイント高いです。エモメロディ!

そして全員17小節目以降で拍子が迷子になる人多数。当然わたしも迷いました。
実は「18小節目だけが2拍子」なだけなので、そんなに複雑なことはしてないんですけど、
なんせ曲が速くて忙しいので……タネが割れれば意外にシンプルなんですがね!

そんな感じで煙に巻かれつつも「ぎゅーっとして(略)」のフレーズ力の強さでしっかりサビを〆ていく。サビ前の「あくまりさかまた」然り、基本的に要所のフレーズ力の高さがすごい。カオスな電波ソングで一番重要な要素かもしれない。

1:32-1:56 Cメロ key=F BPM=131→160

ワンコーラスでうひゃあおなかいっぱいじゃー、となってるところに
「まだいけるっしょ?」とばかりにテンポチェンジ。セクションが変わったらテンポ変えないと死ぬ病気にかかったの?

さておき、このセクションはかなりサンバ色の強いセクション。
クレジットがないため生演奏かどうかはわかりませんが、裏のフレットレスベースによるベースラインが縦横無尽に駆け回ってるのが楽しいです。
そしてメロディのリズムがかなりイレギュラーな16分を交えていてとても歌いづらそうなパート。ライバーさんたちほんとようやっとる……

んでもって、9小節目から今楽曲3度目となる加速が入ります。まだ2分経ってないんだけど?????

1:56-2:04 間奏サビ key=F BPM=180

Cメロの終わりのBPMが160。
このセクションのBPMが180。
またBPM変わりよる!!!もうやだこの曲!!!!!!

2:04-2:19 Aメロ key=Fm BPM=150

基本的に歌以外は1番と同じ。意外にも「正統派2番」です。まあそもそもの1番がカオスすぎて全然そんな気がしないんですけど。

2:19-2:45 Bメロ key=A♭→F BPM=105→180

同じく「楽曲構成は1番と同じ」。
17小節目からの3方向からお三方のセリフが聞こえるとこ、セリフ考えたのはご本人なんなのか、それともかめりあさんなのか。

2:45-3:16 サビkey=F BPM=180

ラストが1番と違いますね。
「リゾートと言えば?」の部分がこの楽曲でもっとも琉球要素の強いセクションです。三線が弾いてるフレーズはちゃんといわゆる「沖縄音階(2度と6度を抜くスケール)」になってます。まあその裏で急にハネリズムになりながら減速してるのはちょっとよくわかんないんですが……

3:16-3:47 ちょっとよくわかんないところ key=F BPM80→BPM不定→BPM120

何この……何?

本来一般的に「Cメロ」と呼ばれるパートなんですが、
なんせ一切メロがないので呼称にも困る有様です。

リゾートパート→パニックホラーパート→悪い夢パート→夢から覚めたパート
みたいな感じで落ちサビに繋がっていく構成ですね。これ30秒でやるの詰め込みすぎでしょ……

「セクシーなボディー」のところで左右から銃撃音が聞こえてくるの、芸が細かい。
「しゃーく!!」のとこは5拍子→5拍子→4拍子の計14拍ですね。

3:47-4:04 落ちサビ key=F BPM=140→180

8bit系のシンセ+ピアノで始まるこのパートは、おそらくこの楽曲で唯一落ち着けるパートですけど、
そこでも「サメかけタコの夢も」で的確に「ふふっ」てさせてくるのずるいですね……

実はここの落ちサビはメロディもそうですが、コード進行も若干違っていたりします。ほかのサビはFM7で始まってますけど、ここはAm7でのスタートですね。

そして「あくまりさかまた」の「印籠フレーズ」を加速しながら2度切ってくる、ラスサビに向かうに相応しい構成です。

4:04- ラスサビ key=F BPM=180

ラスサビだからといって特別なことはそこまでしておらず、
15小節ー16小節のフレーズを歌詞替えで3度繰り返すところくらいでしょうか。
もともと情報量が超多いサビなので、ほぼ据え置きでもラスサビとして全然聴き劣りしないですね。

アウトロはなく、最後は微減速しながらのFM11で楽曲の〆。
このコードが抜群に気持ちよく、最後までチョコたっぷり(チョコ以外にもいろいろたっぷり)な楽曲でした。

まとめ

楽曲中で合計17回のテンポチェンジをするというもうめちゃくちゃな楽曲ですが、
不思議となんだかまとまりがあるように錯覚させられてしまう(?)すげー曲でした……。

作り手の目線としては、
ハチャメチャ電波ソングもただハチャメチャやるだけだと「いろいろやってるけどイマイチ印象がまとまらない」になっちゃうんですよね。
この曲のすごいとこはそれが一切なくて、こんだけありとあらゆる方向に振り切れてても全体として楽曲に「謎の説得力」が生まれてるところ。
作詞作編曲かめりあさんの手腕は当然ですが、メイン歌唱のお三方の汲み取り力と表現力、
そして(前作もこの路線だったとはいえ)このコンセプトにGOを出したディレクターさんも凄い。プロの仕事だなあ……。

「まとまりのある電波ソング」に大事なのは、
展開に対する地味ながら細やかな編曲面でのケアと、
なんといっても楽曲を牽引できるパワーのある決めフレーズだなー、と改めて思いました!すごく勉強になった!

上記に記述した楽曲のコードとかBPMは自分で聴きとったり計測したりしたので、もしかしたら間違ってるかも。もしも気づいたらやさしく教えてくださいー!